念のために覚えておこう! ~Windowsナレーターの使い方~
1. いざという時に役立つナレーター
冒頭にも書いた通り、胃パン的なサードパーティ製スクリーンリーダーは容量が大きく、利用に際して大量のメモリを消費しがちです。このため、多数のプロセスを同時に進行する際や複雑な操作を行う場面では、急にフリーズしてしまうことが時々あります。スクリーンリーダーによっては再起動ショートカット(PC-TalkerではCtrl+Shift+F3)が用意されていることもありますが、ソフトウェアの動作が完全に停止し、パソコン本体を強制的にシャットダウンしなければならない場合もあります。
ですが、そんな緊急時でも、自らファイル等を保存し、適切にパソコンを再起動するために、Windowsには「ナレーター」というスクリーンリーダーがデフォルトで搭載されているんです。まずは僕の経験から、このナレーターでできること、できないことをリストアップしてみます。
できること・得意なこと | できないこと・苦手なこと |
---|---|
一般的なウィンドウ・ファイルのテキスト読み上げ | 画像・pdfファイルのOCR変換・読み上げ |
メモ帳・Wordなどのテキストエディタの操作 | Excel・Outlook等テキストエディタ以外のソフトの操作 |
各種移動・読み上げショートカットキーの利用 | 編集・マウス操作などの高度なショートカットキー |
以前のWindowsでは日本語の読み上げにさえ対応していなかったナレーターですが、10になってから最低限の操作はナビゲートしてくれるようになりました。ただ残念なことに、今でも大半のソフトウェアの操作はできず、細かな制御ショートカットも組み込まれていません。無料で標準搭載されているのにもったいないですが、上記のようにできることは限られており、普段使いできるスペックにはなっていません。それでも、スクリーンリーダーが動かなくなってしまった際など、作業を保存してパソコンをシャットダウン・再起動する程度のことならスムーズに行えます。次項からは、このナレーターの起動方法、使い方などについてご説明します。
2. ナレーターの起動とキー操作
ナレーターは通常、「コントロールパネル」 → 「コンピュータの簡単操作センター」 → 「ナレーターを有効にする」から起動できますが、標準のショートカットキー、Ctrl+Win+Enterですぐに立ち上げることができます。特に緊急時には画面を操作できなくなるため、念のためにこのショートカットを覚えておくといいかもしれません。
ナレーターを初めて起動すると、ナレーターのダイアログウィンドウが開きます。このウィンドウはナレーターの本体のようなもので、これを閉じることでナレーターを終了することもできます。
ナレーターを使っていても、基本的な操作は標準時とあまり変わりません。ただ、「スキャンモード」では矢印キーの機能が変更されるので注意が必要です。「スキャンモード」というのはvoiceoverでいうところのクイックナビゲーションのようなもので、矢印キーのみで要素間を移動するためのモードです。つまり、本来エディタ内では文字・行の移動に用いられる矢印キーは、これが有効化されていると段落・ブロック移動に割り当てられてしまうということです。スキャンモードが無効でも、次項で説明する「ナレーターキー」を組み合わせることで通常の要素移動ができますので、一般的にはあまり使わない機能だと思います。
スキャンモードが無効になっていれば、その他の操作の大部分は通常と変わりありません。ただし、前項でも説明しましたが、移動できたからといって、それが必ずしも読み上げられるとは限りません。今ナレーターのカーソルがどこにあるのか、しっかり把握しながら操作しましょう。

3. 主なショートカットキー
続いては、ナレーターに特有のショートカットのうち、重要なものをピックアップしてご紹介します。
ショートカットキー | 機能 |
---|---|
Ctrl+Win+Enter | ナレーターの起動・終了 |
Ctrl+Win+n | ナレーター設定の起動 |
スキャンモードの切り替え | |
Nar+t | ウィンドウタイトルの読み上げ |
Nar+w | ウィンドウの読み上げ |
Nar+Tab | 現在の項目の読み上げ |
Nar+r | カーソル位置からの読み上げ |
Nar+Ctrl+r/Nar+↓ | 先頭からの読み上げ |
Nar+i/Nar+↑ | 現在の行の読み上げ |
Nar+Ctrl+. | 次の文の読み上げ |
Nar+Ctrl+, | 現在の文の読み上げ |
Nar+Ctrl+m | 前の文の読み上げ |
Nar+Shift+←/→ | 単語単位の読み上げ |
Nar+f | 書式情報の読み上げ |
Nar+←/→ | 前後のコマンドへの移動 |
Nar+Ctrl+f | ナレーター検索 |
Nar+h | 次の見出しへの移動 |
ナレーターを緊急時にのみ使うならショートカットを覚える必要はないと思いますが、普段からスクリーンリーダーの補助として用いる場合には、上記のショートカットが役に立つと思います。その他のショートカットが知りたい場合は、Nar+CapsLock+1で(※2)入力学習モードを起動して、知りたいショートカットの組み合わせを押すことでその機能を学ぶことができます。
注: 1. Narとはナレーターキーのことで、次項で説明する設定で選ぶことができます。
2. 学習モードはNar+CapsLock+1を2回押すことで終了できます。
4. ナレーターの設定項目
ここからはナレーターを日常的に使いたい方のための内容ですが、ナレーターの音声・操作などの設定はCtrl+Win+nで開くことができます。この項では、主な設定項目について説明します。
ナレーター設定で最初に表示されているのは、ナレーターの自動起動・起動後の反応などに関する設定用チェックボックスです。サインインの時にナレーターを自動で起動する設定の他、起動後にホームを表示する設定や、ユーザー切り替え時にナレーターを利用する設定などが変更できます。
起動設定の下には、音声設定のグループがあります。ここではナレーター音声を変更でき、声質、速度・高さ(0~20)、ボリューム(0~100)の設定を調節することができます。また、他のソフトウェアの音が邪魔になる時には、「ナレーターの読み上げ時に他のアプリの音量を下げる」をオンにすることで音声を強調させることができます。
起動と音声に関する設定以外は、大部分が詳細度に関する項目です。読み上げる情報量や入力キーの読み上げなど、何をどれだけ読むかが詳細に変更できるようになっています。
5. まとめ
そんな訳で今回は「いざという時に使えるナレーター」について説明してきました。まだまだ有料のスクリーンリーダーのようには使えませんが、緊急時や読み上げの補助としては十分使えるのではないでしょうか。僕自身PC-Talkerがフリーズした時のために設定は済ませてありますし、全盲ユーザの皆様にはお勧めの機能ですよ。