初めてのラズパイに大苦戦‼️
~全盲初心者による単独Raspberry Pi 500セットアップの記録~


プログラミングの教材から常駐サーバー、IoTデバイスへの活用まで、幅広い用途に使えるシングルボード・コンピュータ(基板1枚で構成されたパソコン)の「Raspberry Pi」シリーズ(以下、ラズパイ)。

実はそんなラズパイに興味を持ち、何年も前から購入を検討していた管理人のLUCA。ただOSのインストール等全ての環境設定を自ら行わなければならないということもあり、なかなか買ってみる勇気が出ず...そうこうしているうちに、円安や半導体不足で大幅な値上げがあり、すっかり諦めてしまっていました。

そんな中、偶々メルカリで型落ちの「Raspberry Pi 500」が「新品未開封」で安く売られているのを見かけ、先日ついに初ラズパイを購入してしまいました。

そこで今回はラズパイの概要やLUCAが購入した機種のご紹介、また初のOS・スクリーンリーダーセットアップを単独で行うに当たって困った事などをお話できればと思います。

✴️今回はいつもの記事と違い、「視覚障害者にとって便利なアイテム」を紹介するものではなく、どちらかというと「視覚障害者1人で使うのはかなり大変だった」という経験談を共有するものです。ラズパイの設定にはかなりLinux系OSの知識が必要となりますので、ご購入される際にはしっかりと下調べされることをお勧めします。


「Raspberry Pi 500」と書かれたキーボードとmicro-SDカード、Linuxの公式マスコットキャラクターのペンギンを模したフィギュアが並べられた木目調のデスクのイラスト。背景には様々なコマンドが表示された、黒いターミナル画面が描かれています。

⚙ そもそもラズパイとは?

機種の紹介に入る前に、まずは大前提、「ラズパイ」についてご説明します。

「Raspberry Pi」(ラズベリー・パイ、通称ラズパイ)は、イギリスのRaspberry Pi Foundationによって開発された、小型で低価格なシングルボードコンピューターです。見た目は手のひらサイズの基板なのですが、LinuxベースのOSを動かすことができ、Webブラウジングや文書作成、プログラミングなど、一般的なパソコンに近い使い方ができます。

もともとは子どもたちにコンピューターサイエンスやプログラミングを学んでもらうことを目的として開発されましたが、その低価格さと高い拡張性から世界中のホビーユーザーや開発者の支持を集めるようになりました。

ラズパイの歴史は2008年に設立されたRaspberry Pi Foundationから始まります。当時、イギリスの大学ではコンピューターサイエンスを学ぼうとする学生の数やプログラミング経験が減少しており、その状況を改善するために「誰でも気軽に触れられる安価なコンピューター」を作ろうというプロジェクトが立ち上がりました。そして2012年、35ドルという驚きの価格で初代Raspberry Piが発売され、大きな話題となりました。

その後も性能向上とともに様々なモデルが登場しています。一般的な用途向けの「Raspberry Pi 5」や「Raspberry Pi 4」等の一桁ナンバリング、小型・省電力な「Zero」シリーズ、組み込み用途向けの「Compute Module」シリーズ、そしてマイコンボードである「Pico」シリーズなど、目的に応じて選択できる製品群が展開されています。

ラズパイの用途は非常に幅広く、

など、多岐にわたります。GPIOと呼ばれる端子を利用すれば、LEDやセンサー、モーターなどを接続し、現実世界の機器を制御することもできます。そのため、「パソコン」と「電子工作キット」の中間のような存在ともいえるでしょう。

近年では価格高騰と共に性能向上が著しく、特にRaspberry Pi 4や5以降は普段使いのパソコンに近い快適さを実現しています。

また、LUCAが今回購入した「Raspberry Pi 500」を含む3桁ナンバリングシリーズは、キーボードの中にコンピューター本体を内蔵したモデルで、往年のホームコンピューターを思わせるユニークな製品です。次項では、この Raspberry Pi 500 がどのような製品なのかを紹介していきたいと思います。


⚙ 購入した「Raspberry Pi 500」のご紹介

今回購入した「Raspberry Pi 500」を含め3桁のナンバリングがされているモデルはあらかじめラズパイの基板がキーボードに埋め込まれた機種で、基本的には対応する1桁ナンバリングのモデルと同等の性能を備えています。

実は500は既に型落ちモデル、現状の最新モデルは本体に256GBのSSDと高性能プロセッサーを内蔵した「Raspberry Pi 500 Plus」なのですが、円安と部品不足のため8万円台と、とても「低価格」とは言えないお値段になっているため、ラズパイ初挑戦ということもあり500を購入することにしました。

※因みに、やや海外モデルよりも高価な日本語配列版(一般販売価格¥30,000~¥39,000)の新品・未開封品を、メルカリで¥27,800で入手できたので、良い買い物だったと思っています。

以下、Raspberry Pi 500の基本情報・スペックです。

発表/発売日
・グローバル発表: 2024年12月9日
・日本語配列モデル発売: 2025年7月
一般販売価格(ChatGPT/Copilot調べ)
・US配列: 発売時¥18,000前後、現在¥20,000~¥25,000
・日本語配列: 発売時¥20,000前後、現在¥36,000~¥40,000
製品形態
・Raspberry Pi 5ベース
・キーボード一体型
メモリ・ストレージ
・メモリ8GB
・内蔵ストレージ無し(OSインストール済みの32GB micro-SDカード付属)
CPU/GPU
・2.4GHz クアッドコア Arm Cortex‑A76 (64bit)
・VideoCore VII(OpenGL ES 3.1 / Vulkan 1.3対応)
ネットワーク
・Gigabit Ethernet、Wi‑Fi 5
・Bluetooth 5.0
映像出力
・micro HDMI ×2(デュアル4K/60Hz)
USBポート
・USB 3.0×2
・USB 2.0×1
・USB Type-C×1
GPIOピン
・40ピンGPIO搭載
寸法/重量
・サイズ: 286 × 122 × 22mm
・重量: 約379g

ラズパイ500についての情報は以上です。

本来1桁ナンバリングシリーズでは基板を守るためのケース、キーボード、モニター等を自ら購入して接続しなければならないところ、500等3桁ナンバリングでは初めからキーボード搭載ケースに内蔵されている分、周辺機器を揃える手間が減らせるという利点があります。特にモニター・マウスを必要としないスクリーンリーダー利用者の場合、イヤホンと電源ケーブルさえ繋げればすぐに使い始められるため、とても手軽なモデルと言えます。


※こちら、Raspberry Pi 500本体の写真です:

木目調のテーブルに置かれたRaspberry Pi 500本体の写真。白いコンパクトキーボードのような外観で、最下段にRaspberry Piロゴの描かれたSuperキーが搭載されているのが特徴です。

⚙ セットアップの経験談

さて、ここまで説明してきたラズパイですが、今回LUCAが初めてOS・スクリーンリーダーをセットアップするに当たり、かなり苦労した経験談を書いていこうと思います。ラズパイに興味をお持ちの方は、ぜひこちらをご確認いただき、覚悟を決めた上で購入していただければと思います(笑)

1. OSインストール

最新モデルを除きラズパイには内蔵ストレージがなく、つまりは事前にインストールされたOSやファームウェアもありません。そのため、SDやmicro-SDカードにインストールしたOSを利用することになります。

日本語配列版のラズパイ500にはすぐに使い始められるよう32ビット版のRaspberry Pi OSがプリインストールされた32GBのmicro-SDが付属しているため、最初はそちらから試そうとしたのですが、なかなか読み上げがうまく行かず...

Raspberry Pi OSでは視覚障害者向けのオプションとして、初回起動時にCtrl+Alt+Spaceを入力することでスクリーンリーダー「Orca」を自動インストール・適用するオプションが用意されているのですが、これがなかなか起動できなかったり、Orca特有の装飾キーが反応しなかったり...

そこで自らOSを準備することにしたのですが、以下の通りなかなか上手くいかず、何度もOSを書き込み直すことになってしまいました。

(1) Raspberry Pi OS 64ビット(Debian 13 Trixie)
・概要: Debian系OSを採用した、最新のRaspberry向けOS
・選定経緯: ラズパイと最も相性の良いOSの最新版であり、上記Orcaの自動インストールに対応しているため
・インストール後の状況: Desktop画面、メニュー等極めて重要な画面を読み上げられない、Orcaがターミナルと紐づいてしまいターミナルウィンドウを閉じると自動的に停止してしまう
(2) Raspberry Pi OS Legacy 64ビット(Debian 12 Bookworm)
・概要: Debian系OSを採用したRaspberry向けOSの、1つ前の安定版
・選定経緯: 最新版OSと比較してOrcaの機能が安定していると思われたため
・インストール後の状況: ほぼ最新版と同様、実用的なレベルには達していない
(3) Ubuntu 24.04 Desktop LTS
・概要: 2004年から開発/更新が続けられている代表的なDebian系OSのLTS(長期サポート)版
・選定経緯: 汎用版OSの中でも安定性/信頼性が高くOrcaを標準搭載しているため
・インストール後の状況: OS書き込み時にWindows等別端末から操作するための「SSH」やWi-Fiの設定が出来ず、またセットアップ画面では標準搭載されているOrcaが呼び出せないため全盲では操作不能
(4) Ubuntu 24.04 Server⇒Desktop
・概要: Ubuntuのコマンドラインだけをサーバーとして利用するためのOSから始め、GUI搭載の上記Ubuntu Desktopへ移行させる作戦
・選定経緯: Ubuntu ServerではOS書き込み時にユーザ情報やSSH、Wi-Fi等必要な情報を事前に設定することができ、また後からDesktop版へアップグレードさせることができるため
・インストール後の状況: 無事SSH経由でWindowsから接続、NVDAを使ってDesktop版への更新とOrcaのセットアップに成功

このように、何度も試行錯誤しながらやっと使えるようになったOSとスクリーンリーダー「Orca」...ただ、Orcaを最低限使えるようにするまでがまた大変でした。

2. Orcaの日本語対応

デフォルトでは英語表示になっているUbuntu、Localeや入力方法を日本語に対応させる必要がありました。とはいえ、この段階では特に苦労することなく導入に成功...問題はこの後です。

デフォルトで「espeak-ng」という英語の音声エンジンしか搭載していないOrcaでは、日本語の読み上げ環境を整えなければなりません。e-speakもひらがな・カタカナの読み上げはできるものの、漢字は「Chinese Letter ○○」とコードのようなもので認識してしまい、そのままでは正しく読み上げてくれないという問題があります。

そこでOpen-JTalkという、低品質ではあるものの導入しやすく反応の早い音声エンジンと、Piperという高音質音声エンジンの日本語モデルを導入することにしたのですが、そもそもエンジンを読み込みスクリーンリーダーへ伝えるための「Speech Dispatcher」というソフトウェアが曲者で...

と、様々な問題がありました。

何とかChatGPTに協力してもらって作成したオリジナルの読み上げモジュールにより読み上げ対象をOrcaへ送れるよう設定し上記(1)は解決できたものの、この方法ではフォーカス移動から読み上げまでに1、2秒のタイムラグが発生してしまい...

最終的には自作スクリプトを使ってそれぞれのエンジンにキーボードショートカットを割り当て、状況に応じて使い分けることになりました。

また(2)について、Orcaでは日本語キーボードで漢字変換をする時も、テキストエディタ等でカーソルを移動させた時も、ひらがな/カタカナ/漢字/全角・半角等文字種に関わる情報を全く教えてくれず、勿論漢字の詳細読みにも対応していません。

これについては最低限の文字種と前後の文章を読み上げるためのショートカットキーをOrcaに追加するアドオンを作成・適用することで対処していますが、現状わかるのは文字種だけで、漢字の詳細について把握する手段はまだ確立できていません。

その他(3)や(4)についてLUCAの技術力だけで対応することは難しく、メインメニュー等まだ読み上げに対応していない要素も残っていたりと、スクリーンリーダーとしてのレベルはWindowsやMacには遠く及ばない状況です。

3. 今は...

前述の通りまだまだ課題だらけの読み上げ機能ですが、何とか主要機能は使えています。

勿論ラズパイだけで作成した文書は他端末でダブルチェックしないと怖くて使えたものではありませんが、サーバー管理・ウェブページ更新等の用途であれば、何とか低品質のスクリーンリーダーでも使えるのではないかと思います。

また、今後もOrcaをより使いやすくするための実験・検証は続けていきたいと思っていて、これもある意味「ラズパイの用途」としては正しいのではないかとも感じています(笑)


⚙ それでもラズパイを使ってみたいという方へ

ここからは以上の内容を読んでもなお、「ラズパイを使ってみたい!」と思われた方向けです。

少し本文でも触れた通り、LUCAはセットアップ手順を教えてもらう目的、また一部ツールの作成目的で、ChatGPTを使いながらラズパイの操作を行っていました。そこでついでに、「過去のチャットとネットの情報を組み合わせて、視覚障害者向けのセットアップガイドを作って」というプロンプトを中心に、マニュアルの生成もお願いしてみました。

その結果生み出された、膨大な量のスクリーンリーダー利用者向け手順書をこちらで提供したいと思いますので、今後ラズパイを使ってみたい方、今まさにラズパイの設定に苦戦されている方はぜひダウンロードしてご利用いただければと思います。

📃視覚障害者用完全セットアップガイド:


⚙ まとめ

今回は管理人LUCAが長年興味を持っていたシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」、通称ラズパイの概要や実際に入手したモデル「Raspberry Pi 500」のご紹介と合わせて、実際にOS・スクリーンリーダーをセットアップするに当たり苦労した経験談を長々と綴ってきましたが、いかがだったでしょうか。

基本的に「視覚障害者にお勧めのアプリやツールをご紹介する」という趣旨で運営している本サイトとしては珍しい、「知識と技術に自信がなかったらやめておいたほうが良いツールのご紹介」になってしまいましたね...

ただ、PCと比べ導入コストが低くカスタマイズ性が高いラズパイがプログラミングやサーバー管理等幅広いシーンで活躍してくれる便利なアイテムであることは確かなので、日ごろからCUIの操作に慣れている方は、ぜひ記事内で共有しているセットアップガイドをご参照の上、購入・利用を検討してみてください。