PC作業を一気に効率化してくれる❣
〜OS別にお勧めのコマンドランチャーをご紹介〜


登録したアプリやファイルを1ステップで開けるようにしてくれる、PC用のランチャーアプリ。そんなランチャーの中でも、キーボードからの入力だけでアプリ/ファイルの起動、ウェブ検索、計算から辞書引きまでありとあらゆるタスクをこなしてくれる、「コマンドランチャー」というものをご存じでしょうか。

今回は視覚障害者にとっても非常に使いやすい「コマンドランチャー」の特徴と、Windows・Macそれぞれに対応したお勧めのコマンドランチャーアプリをご紹介したいと思います。

✴いつも通り、記事中でご紹介しているアプリ・ツールなどは全てスクリーンリーダー(NVDA・VoiceOver)で操作できることを確認してから掲載しています。


鉛筆をもっている手のクロースアップイラスト。紙には「Command Launcher」と書かれています。

ℹ️ 前提: 「コマンドランチャー」って何?

Windows・Macにお勧めのアプリをご紹介する前に、まずは「コマンドランチャーって何???」という方に向けて、コマンドランチャーの基本情報や仕組みについてご説明したいと思います。詳しい説明は省いてお勧めアプリだけを確認したいという方は、次項以降をご覧ください。

1. コマンドランチャーとは
「コマンドランチャー」とはアプリやファイルを開きやすくするための「ランチャーアプリ」のうち、コマンド、つまりキーボード入力だけで利用できるもののことを言います。
Linux系OSやターミナルのように指示を入力するだけで色々な操作を自動化することができるため、マウス操作が難しい視覚障害者や上肢不自由者などにとっては特に使いやすいものとなっています。
2. コマンドランチャーの仕組み
事前に設定したショートカットキーを入力するとコマンド入力用の小さなウィンドウが開き、そこに指示を打ち込んでいく仕組みです。
指示はEnterキー押下と共に送信され、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)の操作が求められることはありません。
アプリ・ファイルの名前を入力して起動させるだけでなく、検索ワードの直前に「google」や「g?」などのサービス名・頭文字を入力することで、対応サイトで簡単にウェブ検索をすることも可能です。
3. メリット
(1) キーボードから手を放すことなく、瞬間的にアプリ・ファイル起動、ウェブ検索、計算、辞書引きなど様々なタスクを実行できる
(2) 視覚や上肢機能に障害のあるユーザでも利用しやすい
(3) 複数のウィンドウ間を行き来する必要がなくなり、マルチタスクが楽に行える
(4) GUIのランチャーアプリと比べて使える機能が多い
4. デメリット
(1) コマンド(指示)の出し方を覚える必要がある
(2) キーボード入力が遅い場合、通常のランチャーよりもアプリ起動に時間がかかってしまう可能性がある
(3) コマンド入力のウィンドウを表示するためのショートカットキーを、他のアプリ等と被ってしまわないよう設定する必要がある

コマンドランチャーの説明は以上となります。一言で要約すると「キーボード入力で色々な機能を呼び出せるアプリ」のことで、そもそもPC全体をキーボードで操作する視覚障碍者にとってはとても使いやすいアプリなんです。

次項からは本題、Windows・Macそれぞれに対応した、おすすめのコマンドランチャーアプリを1つずつご紹介していきます。


🪟 Windows向けお勧めアプリ「Ueli」

先にご紹介するのは、視覚障害者ユーザがより多いと思われる、Windows向けのアプリ、「Ueli」です。

元々コマンドランチャーの多くはMac向けに提供されているもので、特に無料で使えるWindows用アプリは少ないのが現状です。そんな中、十分な機能が搭載されていて、無料で大部分の機能が使え、更にスクリーンリーダーとの相性も良いという利点だらけのアプリが、今回ご紹介する「Ueli」です。

ダウンロード・インストール方法

Windowsへインストールする場合、最も使いやすいのがインストーラを使った方法です。まずは公式サイトのダウンロードページにアクセスして、「Windows」というテキストの直下にあるリンク「Installer (.exe)」を選択しましょう。

選択と同時にダウンロードが開始され、正しく保存されていれば「ueli-Setup-X.X.X.exe」というようなファイル名のインストーラファイルがダウンロードフォルダに格納されているはずです。環境によってはセキュリティソフトにダウンロードがブロックされてしまうことがありますが、「保存」や「続行」を押してダウンロード作業を継続しましょう。

ダウンロードされたインストーラを実行すると、インストール先フォルダを選ぶだけのシンプルなインストーラ画面が表示されます。指示に従ってインストール先フォルダを決めたら、「次へ」を押下してインストールを開始します。

インストール完了のメッセージが表示されたら、インストーラを終了してください。なおUeliのコマンド入力用ショートカットキーはデフォルトではAlt+Spaceになっていますので、正しく起動するか試してみましょう。

設定方法

そのままでも十分使いやすいUeliですが、起動用のショートカットキー、外観、各種機能のデフォルト値などを自由にカスタマイズできるようになっています。

設定をひらくにはまずタスクバー上に表示されたUeliのアイコン(デフォルトでは非表示になっているため、展開ボタンを押して表示)を右クリック(スクリーンリーダー利用者はアプリケーションキーまたはShift+F10)して、ポップアップの中から「Settings」を選択します。

設定画面のアクセシビリティはいまいち高くないのですが、とりあえず必要な項目は最低限読み上げられるようになっているようです。カスタマイズできる項目が非常に多いため、ここでは重要度の高いものだけをピックアップしてご紹介します。

「General」
いわゆる「一般設定」を変更できるセクションです。
「Language」のポップアップからはアプリの表示言語、「Hotkey」からはUeliを表示するためのショートカットキーを任意の組み合わせに変更することができます。
「Appearance」
ウィンドウ全体やコマンド入力用テキストフィールドの外観を変更することができるセクションです。
ウィンドウ・テキストフィールドの大きさ、表示される文字のフォントやサイズ、透明度、スクロール方法など様々な要素が簡単に変更できるようになっているので、ウィンドウが見づらいという弱視のユーザはぜひ調整してみてください。
「PLUGINS」以下のセクション
設定画面最初のカテゴリ表示で、「PLUGINS」と書かれたテキスト以下のセクションはそれぞれUeliのコマンドで使える、各種便利機能の設定項目になっています。
例えば「Application Search」セクションでは起動できるアプリのルートフォルダやファイル形式を事前に指定できる他、「Currency Converter」などでは通貨換算のデフォルト通過等を選べるようになっています。

Ueliの設定項目は以上です。続いてはアプリそのものの使い方をご紹介していきます。

Ueliの使い方

基本的な使い方としては先ほども記載した通り、設定したショートカットキー(デフォルトではAlt+Space)を押下し、表示されたテキストフィールドに指示を入力していくという手順になります。

直接打ち込むコマンドはアプリ名として認識され、設定で指定したプログラムフォルダやデスクトップ上のEXEファイルなどを簡単に起動できるようになっています。

また、詳しくは「🆒 Ueli・Alfredの便利な使い方をご紹介!」の項でご説明しますが、コマンドの手前に特定の文字列を入力することでファイル・フォルダ起動や辞書検索、各種サービスを用いたウェブ検索などができる他、「10*20+5」のように、計算式を入力することで計算機として使うこともできます。


🍎Mac向けお勧めアプリ「Alfred」

続いてはMacユーザにお勧めのアプリ、「Alfred」のご紹介です。実はWindows向けにご紹介した「Ueli」のMac版も提供されてはいるのですが、VoiceOverとの相性・サポートや多言語対応の良さ、無料機能の豊富さなどからAlfredをお勧めしています。

Alfredの歴史は長く、2010年の初リリース以来、元祖コマンドランチャーとして多くのMacユーザに親しまれてきています。その分サポート体制・Wiki記事なども多く、活用例などを探しやすいという特徴があります。

ダウンロード・インストール方法

Alfredをダウンロードするには、まず公式サイトに遷移して、「Download Alfred 5」というリンクを選択しましょう。

リンク選択と同時にダウンロードが開始され、「Alfred_5.X_xxxx.dmg」といった名前のディスクイメージファイルが保存されるかと思います。

続いてはダウンロードされたDMGファイルを開き、中に保存されているAlfredのアプリ本体をApplicationsフォルダなどに移してください。残ったDMGファイルは破棄しても問題ありません。

※Alfredの初回起動時には様々なパーミッション(権限)を求めるシステムダイアログが表示されます。少し操作しづらいかもしれませんが、VoiceOverユーザはウィンドウ選択ツール(VO+F2)を使い、指示に従って各種設定を済ませましょう。

設定方法

パソコンに保存したAlfredアプリを起動した後は、まず初期設定を行いましょう。メニューバー(VoiceOverユーザはショートカットキー「VO+m」の2回押しで移動できます)に新しく「Alfred」というメニューが追加されますので、展開してから「Preferences」という項目を選んでください。

Ueliと同じく設定項目が多いので、以下基本的な項目についてのみ記載します。なお、VoiceOverユーザはウィンドウの最上部、「Alfred Sidebar, Unknown」と読み上げられるところでクイックナビゲーションを切り、上下矢印を使うことでセクションを切り替えることができます。

「General」
いわゆる「一般設定」のセクションです。初期設定などはこちらから行いましょう。
まずはAlfredをいつでもショートカットキーで呼び出せるよう、「Startup」という項目の直下にある、「Launch Alfred at login」というチェックボックスを選択しましょう。このチェックが外れてしまっていると、パソコンの再起動後などにアプリが自動的に立ち上がらなくなってしまうため、注意です。
続いて、「Alfred Hotkey」という欄ではAlfredを呼び出すためのショートカットキーを変更することができます。デフォルトではOption+Spaceになっていますが、「Hotkey is ...」というテキストを選択した状態で任意のキーの組み合わせを入力すると、ショートカットキーを更新することができます。
「Where are you:」という項目の直下にあるポップアップからは地域を設定することができ、「Japan」(日本)もサポート対象になっています。
「Features」
このセクションでは、Alfredから呼び出せる各機能の詳細設定を行うことができます。なお、ここから先は初期設定には関係ありません。
「Features List」からは「デフォルト検索」・「ファイル検索」・「ウェブ検索」・「ブックマーク検索」・「音楽検索」など各種機能の設定項目を選べるようになっており、各機能について検索に使うサービス・デフォルト値・開き方などが自由に変更できるようになっています。
※ただし、クリップボード履歴、音楽検索など一部の機能については無料版では使用できないため、「This feature requires the Powerpack」というメッセージが表示されてしまいます。ご注意ください。
「Powerpack」
「Powerpack」とはAlfredの有料オプションのことで、このセクションからはライセンスキーの登録・購入を行うことができます。
なお、有料オプションには購入時のバージョンでのみ使える「Single License」(£34)と、その後永久に無償でアップデートできる「Mega Supporter」(£59)の2種類が用意されています。
「Appearance」
Ueliと同様、さまざまな外観設定をカスタマイズできるようになっています。
Alfredの外観についてはプリセットのテーマを選べるようになっているのが特徴で、ラージサイズやハイコントラストなど弱しユーザ向けのテーマも用意されています。こういったテーマの変更は「Theme List」テーブルから任意の項目を選択することで可能となっています。
その他、細かな外観設定は「Options」ボタンを押下して展開されるウィンドウから調整することができます。

Alfredの設定方法については以上です。実際には書ききれないほどの設定項目がありますので、ぜひ使いやすいカスタマイズ方法を探してみてください。

Alfredの使い方

Alfredの使い方はUeliとほぼ同じです。設定したショートカットキー(デフォルトではOption+Space)を押下し、表示されたテキストフィールドにコマンドを入力していく形になっています。

こちらについても、次項で詳しいコマンド体系についてご説明したいと思います。


🆒 Ueli・Alfredの便利な使い方をご紹介!

Windows・Mac向けのお勧めアプリをご紹介したところで、続いては両アプリで使える、便利なコマンドについていくつかご紹介したいと思います。

※なお、Ueli・Alfredではコマンド体系が少し異なっているので、ここからは利用するアプリに応じてご利用ください。

ウェブ検索
Ueli: Alfredほど高機能ではありませんが、検索ワードの前に「g?」と入力することでGoogle検索が行えます。
※例: 「g?グーグルレンズ」
Alfred: 様々なウェブ検索に対応しており、検索ワードの前に使いたいサービス名と半角スペースを入力すると対応サイトで検索してくれます。
※例: 「google グーグルレンズ」、「twitter 新型すまほ」等
コマンドライン
いわゆるコマンドライン、つまりターミナルやシェルのコマンドも実行することができます。このコマンドについてはUeli・Alfred共通です。
Ueli/Alfred: どちらもコマンドの前に「>」と半角スペースを入力することで可能です。
なお、AlfredではPowerpackを購入することで、登録したシェルコマンドを任意の登録名で呼び出せる、「Workflow」機能を利用することができます。
計算
Ueli/Alfred: Ueli・Alfred共に、計算式を入力するとその結果を出力してくれます。
なおUeliをスクリーンリーダーで利用している場合には計算式入力後すぐにEnterキーを押さず、テキストフィールドの下方に表示される出力部分を読み上げさせる必要があります。
辞書検索
Ueli: 「dict?」に続けて検索したい単語を入力します。
Alfred: 「define」の後に半角スペースと検索したい単語を入力します。デフォルトの辞書アプリが開くため、あらかじめ言語を設定していなくても利用できます。
翻訳
Ueli: 「t?」に続けて翻訳したい単語を入力します。なお、原文・訳文の言語は事前に設定で指定する必要があります。
Alfred: 「translate」の後に半角スペースを挟み、翻訳したい単語を入力します。Ueliと違いブラウザからGoogle翻訳にアクセスする形になるため、その都度言語設定を変更することができます。

Ueli・Alfredのお勧めの使い方は以上です。他にも数えきれないほどの機能が備わっていたりするので、気になる方はぜひダウンロードしてお試しください。


🌐まとめ

さて、今回の記事では視覚・上肢障害者に便利な「コマンドランチャー」と呼ばれるアプリの概要と、Windows・Macそれぞれのお勧めアプリについてご紹介しました。

アプリ・ファイルを起動するだけでなく、ウェブ検索・URLアクセス・辞書検索・翻訳など数々の機能をキーボード入力1つで簡単に呼び出せますので、ぜひ日々のPC作業に役立ててみてください!


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